定期補充療法とは

血友病の治療には、出血が起こったときに血液凝固因子を補充する出血時補充療法と、出血が起こらないようあらかじめ補充しておく予防的補充療法があります。
定期補充療法は出血が無いときであっても定期的に血液凝固因子を補充し、出血や出血に伴う合併症(血友病性関節症など)を防ぐもので、予防的補充療法のひとつに分類されている治療法です。

「出血を減らす」だけじゃない 定期補充のメリット
 外出やスポーツに積極的に 心理的な負担からの解放も

血液中に凝固因子レベルが1%以上ある中等症の患者では、凝固因子がほとんどない重症の患者と比べて自然出血がめったにおこらず、関節の機能も比較的良好に保たれていることが知られています。

定期補充療法はこの観察をもとに考えられた治療法で、出血のあるなしにかかわらず凝固因子製剤を投与することで、体内の凝固因子レベルを一定以上に保ち、自然出血が起こらないようにする治療法です。

実際に、定期補充療法には関節出血を減らす、関節の機能を保つ、生活の質(QOL)を改善するなどといった効果があることがわかっています。特に、関節内出血はわずかな回数でも血友病性関節症の原因となる場合があることから、関節出血を減らす効果は生涯にわたって患者さんの日常を守る効果であるといえます。出血を恐れて外出やスポーツなどに消極的になりがちだったものの、定期補充を開始後は積極的にチャレンジできるようになったという患者さんも多いようです。

また、血友病では、脳出血や、胃や腸で起こる消化管出血など、見た目にはわかりにくい出血が命の危険につながることがありますが、定期補充療法ではこれらの症状を予防できることもわかっています。こうした効果は患者さんの命を守るだけでなく、患者さんや家族の方からは「いつ起こるかわからない重大な出血を常に心配しなければならない心理的な負担から解放された」という声もあります。

最大のデメリットは注射回数の増加
しかし、インヒビター低下 長期的には医療費の減少も

一方、定期補充療法のデメリットとしては、定期的に注射することから、出血時補充療法と比べて注射回数や投与量が増えてしまう点があります。特に、血管が細くて注射しにくい幼い患者さんへの注射は比較的難しいため、なかなかうまくいかなかったり、続けられなくなってしまう場合もあるようです。しかし、注射がうまくできないようなら病院に注射をお願いすることもできますし、カテーテルやポートなどの静脈注射用の装置を使う方法もあります。特に、出血が多い場合には、主治医の先生に相談してみてください。注射回数や投与量が増えてしまうことで、インヒビターが増えてしまうことを心配される方もおられますが、実際には定期補充療法はインヒビター発生を低下させる要因のひとつだと考えられています(2007年 CANAL研究)。

・定期補充療法と出血時補充療法におけるインヒビター発生率の差

Gouw SC et al, Blood 2007;109: 4648-4654

また、医療費が増えてしまうことを気にされる患者さんもおられます。患者さんが支払う額は医療費助成制度があるため変わらなくても、医療費が高額になることで国の財政に負担をかけてしまうのでは、というご心配です。確かに、投与量が増えれば短期的には治療費は大きくなりますが、定期補充療法を行わずに悪くなってしまった関節の治療にかかる医療費や社会保障費が高額になるであろうことや、出血による患者の苦痛などによる社会的な損失を考えると、長い目で見て費用に見合うものであると考えられています。

定期補充療法とは