ライフステージ別 血友病とのつきあい方青年~壮年期(大学/社会人)
監修
荻窪病院 血液凝固科 長尾 梓 先生
荻窪病院 血液凝固科 臨床心理士 小島 賢一 先生
大学生や社会人となって間もない青年期は、保護者から自立してさまざまなことを自分で管理するようになる時期ですが、反面生活習慣が乱れがちな時期でもあり、注射の打ち忘れが増えるとも言われています。
壮年期(25~45歳ごろ)になると仕事が忙しくなったり、家庭をもったりと生活が大きく変化することがあります。自分の意思でしっかりと病気と向き合い、治療を継続することが重要です。
生活習慣の乱れが出血の原因になることも
青年期から壮年期は、生活環境に大きな変化がみられることの多い時期です。生活習慣や食習慣の乱れから、これまで経験したことのない出血が起こることもあります。40歳以上になると生活習慣病の割合も増えますので注意しましょう。
消化管出血は、胃・十二指腸潰瘍、胃炎・腸炎、逆流性食道炎などで消化管の粘膜に傷がついたときに起こることがあります。なかでも消化管潰瘍は発生する頻度が高く、大量出血を起こすこともあります。
■青年~壮年期によくみられる出血
- 小倉妙美ほか:“Ⅱ.診断 1.臨床症状” みんなに役立つ血友病の基礎と臨床 白幡聡ほか編 改訂3版 医薬ジャーナル社:112-118, 2016
治療の進歩により、さまざまな職業に就ける時代
就職は人生の大きな転換期です。治療の進歩によって、血友病が理由で志望の仕事をあきらめることは大幅に減りました。
ただ就職後は思うように休めなくなり、その結果、出血が増えてしまう例もあるようです。それに関連して就職活動から血友病であることを伝えるかどうかの判断に迷う人がいます。
就職時に病名を伝えるかどうかについては、次のような理由がよくいわれます。
■就職活動における2つの選択
- ● 理解してくれる職場で働きたい
- ● 体への負担がある職種なので、あらかじめ伝えたい
-
● 通院、医療費や治療のことで後からたずねられたくない
(医療費に関しては原則会社には伝わらないことになっていますが、健康保険組合への特定疾病療養費制度の申請は必要です)
- ● 職場で出血することがほとんど予想されないので、いう必要がない
- ● なじみのない病名を伝えて最初から特別扱いされたくない
- ● 病気への理解は自分の働き方をみて徐々にしてもらえばよい
皆さんはどう考えますか。以前のように家業や公務員でなくてはだめと考える人も減りました。
まずは自分がやりたい仕事かどうかを優先してください。
- 小島賢一:“18 幼稚園、学校、職場と自分の家庭を目指して” はじめてでも安心 血友病の診療マニュアル
- 宮川義隆ほか編 初版 医薬ジャーナル社:250-251, 2017
- 佐藤知恵:Frontiers in Haemophilia 7(1) 29, 2020
安心して旅行するために事前の準備が大切
旅行や出張のときは、期間に合わせた量の製剤を準備します。不意の出血も考えての準備が必要です。また、旅行先で治療が必要になった場合は、普段通院している病院とは違う病院を受診することになりますので、事前確認が重要です。
■旅行や出張時にあらかじめ準備しておくこと
- ● 製剤の保管温度に注意
- ● 飛行機を利用する場合は主治医に証明書を発行してもらい、携帯したり、製剤や注射器具に添付しておくとよい※1
- ※1 医師から処方された在宅自己注射対象薬剤は機内への持込みが可能とされていますが、航空会社の社内規則により厳しく制限されている場合もあるため、詳細については事前に各航空会社にご確認ください。
- ※2 20歳未満は小児慢性特定疾病医療受給者証、20歳以上は先天性血液凝固因子障害等医療受給者証
- 松本剛史:“19 旅行時の注意” はじめてでも安心 血友病の診療マニュアル
- 宮川義隆ほか編 初版 医薬ジャーナル社:258-266, 2017
- 国土交通省:機内持込み・お預け手荷物における危険物の代表例
- https://www.mlit.go.jp/common/001425421.pdf 2024/9/12 参照 より作成