血友病性関節症の対策

監修
　荻窪病院血液凝固科長尾梓先生

血友病性関節症について
未来会議をしましょう

関節症状には、関節内出血と、それが進行した状態である血友病性関節症の2つがあります。関節内出血は定期補充療法（定期投与）で改善しますが、同じ関節で出血を繰り返すと、症状が改善しきらずに血友病性関節症となり、関節が破壊されたり変形したりしてしまいます¹⁾。
スポーツや旅行といったやりたいことから、食事、歯磨き、顔を洗うなどの日常動作まで、これまでと変わらない生活を維持していくために、血友病性関節症の対策をしていきましょう。
足、ひざ、ひじ関節は特に血友病性関節症になりやすく²⁾、関節の痛みは30代から増加することから^3）、痛みや違和感がある場合は、必ず医師に相談しましょう。

■年代別の直近6ヵ月の関節痛^3）

目　　的：血液凝固異常症患者の病態を把握し、その治療の向上と生活の質の向上に寄与すること

対　　象：日本全国の血液凝固異常症^＊患者の全員
＊ HIV感染のある血液凝固異常症（血友病、von Willebrand病、類縁疾患）、HIV感染後天性凝固異常症（所謂第4ルート）および2次・3次感染、HIV非感染の血液凝固異常症

調査方法：令和4年度までの血液凝固異常症全国調査で構築されたネットワークをもとに、日本全国の血液凝固異常症患者全員を対象とし、1,186施設（1,362担当部所）に調査用紙を送付し、令和5年5月31日時点における状況を報告するよう依頼した。調査内容は血液凝固異常症全国調査運営委員会において検討し、令和4年度までの調査用紙を改訂し、凝固因子製剤による出血の治療および予防、インヒビター、血液凝固因子製剤、HIV感染、C型肝炎ウイルス（HCV）に関することを中心とする内容とした。また、使用されている血液凝固因子製剤の現状について情報収集した。原則として文書または口頭で患者の同意が取得されており、その記録があるもの、もしくは倫理委員会による承認の状況あるいは機関の長への報告が確認できたもののみを集計対象とした。

調査期間： 2022年6月1日～2023年5月31日

回答状況：回答は557施設（615担当部所）［回収率：47％（45％）］から得られ、重複報告を推定的削除した5,047件を集計対象とした。

1）植原　健二： Frontiers in Haemophilia 5（1）：29, 2018
2）竹谷　英之：Thrombosis Medicine 13（2）：17, 2023
3）厚生労働省行政推進調査事業「非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究」分担研究：「血友病患者のQOLに関する研究」令和2年度調査報告書

血友病性関節症の検査

関節症状は、痛みや違和感などの自覚症状がない場合もあるため、定期的に検査を受けることが大切です。
検査方法はいくつかありますが、最近注目されているのが関節エコー（超音波検査）です^1）。関節エコーはもともと関節リウマチの検査で主に用いられていた検査方法です。MRIなどと比べて手軽に検査ができること、小児にも使えること、複数の関節を診ることができることなど、いくつもよい点があります^2）。
また最新の研究でも、関節エコーを用いて関節の健康状態を3年間にわたって定期的に検査を行いながら治療を続けた結果、ひじ、ひざ、足関節の状態が改善されたと報告されています^3）。