注射の打ち忘れ
監修
聖マリアンナ医科大学 小児科 長江 千愛先生
注射の打ち忘れについて
未来会議をしましょう
10代後半から20代の青年期は、進学、就職、結婚、子育てとめまぐるしく環境が変わる時期です。社会的立場もできて精神的にも負担がかかり、生活も乱れがちです。思春期から徐々に保護者の管理から離れるため、20代後半に向かうにつれ、注射の打ち忘れが増える時期で1)、患者さんによっては緊急受診や緊急入院になる場合もあります。全国調査(平成29年)でも、小児から15歳くらいまでは定期補充療法(定期投与)を忘れずに行っているのですが、16歳以降の青年期から注射の遵守率が低下し、40 歳以降から、再度上昇しています2)。
■年齢階層別遵守率2)
目 的:血友病患者及び家族の治療及びQOLの向上
対 象:国内の血液凝固異常症患者
調査方法:調査票は、血友病患者を含めた凝固異常症に携わる多方面職種13名で構成されたQOL調査委員会で作成した。調査内容は、基本情報(患者の背景や身体・社会状況)、新薬関連情報、医療保険制度の利用状況、定期補充療法に関する情報、身体機能(身体活動量やスポーツ関連)とした。平成28年3月末に、過去に行われた「血液凝固異常症のQOLに関する研究」に登録されている全国の医療施設の担当医及び協力が得られた全国の患者組織を介して患者及び家族へ調査票を配布し、無記名での記入とし、事務局宛の郵送で回収した。
調査期間:2016年4月~12月31日
回答状況:780件
- 1)佐藤 知恵:Frontiers in Haemophilia 7(1):29, 2020
- 2)国立研究開発法人日本医療研究開発機構 感染症実用化研究事業エイズ対策実用化研究事業
- 「血友病とその治療に伴う種々の合併症克服に関する研究」分担研究:
- 「血液凝固異常症のQOLに関する研究」平成29年度調査報告書
注射の打ち忘れを防ぐには
治療の進歩により、「やりたいことができる」時代になってきています。趣味のスポーツや交友関係などやりたいことを諦めずに続けて行くためには、定期補充療法(定期投与)を継続していくことが大切だと伝えることが重要です1)。
社会人となり、歳を重ねるにつれ責任ある立場を任される機会が増える一方で、身体に無理がかかることも多くなるでしょう。忙しいなかでも、注射を忘れずに治療を続けることで、大出血や入院などのリスクを効果的に回避でき、病欠や休職の心配を減らすことができます。適切な治療を続けることで、自信を持って仕事に取り組むことができ、職場においても安心してパフォーマンスを発揮できる環境を維持することが可能です。これまで自己管理ができていた方は、現状維持を目標にし、症状が悪化しないよう注意して過ごすように心掛けましょう1)。
- 1)佐藤 知恵:Frontiers in Haemophilia 7(1):29, 2020
ライフステージ別血友病とのつきあい方はこちら
青年~壮年期(大学/社会人)
- ●注射を打ち忘れたときの状況などを話し合い、忘れないように工夫する
- ●やりたいことを続けていくために打たないことによるリスク(血友病性関節症や病欠、休職など)を再確認する(血友病性関節症の対策)
- ●出血したときの対応について再確認する(治療について>出血時の対応は?)
- 打ち忘れの状況を伝え、解決策を検討する
- 出血の有無を確認するための検査すべきか相談する
- 出血したときの対応について再確認する