整形外科的治療
監修
荻窪病院 血液凝固科 長尾 梓 先生
荻窪病院 血液凝固科 臨床心理士
小島 賢一 先生
血友病性関節症に対する整形外科的治療
血友病性関節症の整形外科的治療には、患者さんの状態や目的などによっていくつかの治療選択肢があります。
外来での処置ですむものから入院が必要な手術までさまざまありますが、いずれも治療の前に血液凝固因子製剤による止血管理が必要になることがあります。
■関節穿刺・関節内薬物注入
関節穿刺とは、関節内出血を起こした部位に注射針を刺して、血液を関節の外に抜く治療法です。
また、関節内にヒアルロン酸やステロイドなどの薬剤を注射すると痛みや炎症などの症状が軽くなることがあり、このような治療法を関節内薬物注入といいます。
■滑膜切除術
関節内出血によって増えてしまった滑膜(関節の周りをおおっている膜)を取り除くことで、血友病性関節症を進行しにくくする手術です。
関節内出血はあっても骨や軟骨の変形がないか、少ない患者さんに適しています。
■人工関節置換術
血友病性関節症が進行して、痛みや出血により日常生活に支障がある患者さんに対して、傷んだり変形した関節を取り除き、人工の関節に置き換える手術です。
人工関節置換術が最も多く行われる関節はひざの関節で、次いで股関節が多いといわれています。
■リハビリテーション
リハビリテーションは、起きてしまった関節症の影響を少なくするだけでなく、関節症を起こりにくくしたり、日常生活上の活動の制限をできるだけ減らすための身体づくりに役立ちます。
ただし、リハビリテーションを行うことによる出血を防ぐために、主治医の先生と相談のうえ、ご自身の関節の状態にあわせた方法で行うことが大切です。
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- みんなに役立つ血友病の基礎と臨床 白幡聡ほか編 改訂3版 医薬ジャーナル社:227-231, 2016
- 竹谷英之:“12 関節症への対応” はじめてでも安心 血友病の診療マニュアル
- 宮川義隆ほか編 初版 医薬ジャーナル社:181, 183, 2017
- 竹谷 英之:血栓止血誌 35(1):38, 2024
- 牧野健一郎:血栓止血誌 35(1):45, 2024より作成