エイジングと自己注射

監修
 荻窪病院 血液凝固科 長尾 梓先生

エイジングと自己注射について
未来会議をしましょう

治療の進歩などにより、生活の質は劇的に向上し、平均余命は長くなりつつありますが、その反面、加齢にともなう病気に注意する必要性が高まっています1)
中年期(45~64歳ごろ)になると、高血圧症や心疾患といった生活習慣病になる方が増えてきます。この時期には、身体機能が徐々に低下し、初老期や高齢期になると体力や活動量が減りがちですが、筋肉を維持するためにも極端な運動不足は避けるようにしましょう。また、これまでできていた自己注射がさまざまな理由で難しくなってくる場合もあります。健康でアクティブな生活を続けるためには、利用できる制度をうまく活用して、これまで通りきちんと治療を続けることが大切です。

  • 1)長尾 梓:血栓止血誌 32(1):26, 2021

シニア期の自己注射

血管は、年を重ねるにつれて、老化していくことが知られています1)。静脈注射を繰り返すことにより血管確保が困難になる、老眼などで溶解操作や血管を確認することが難しくなる、手の動きが鈍ってうまく注射できなくなる、といったことが生じ、自己注射が難しくなるケースがあると思われます2)。そういった場合は、できるだけ投与回数の少ない薬剤や扱いやすいデバイスにするなどの工夫が必要になるかもしれません。
いずれにしても元気なうちから老後に備え、医師と相談し、周囲のサポート体制について考えていく必要があります3)

  • 1)池上 龍太郎:日内会誌 106(8):1652, 2017
  • 2)木内 英:Frontiers in Haemophilia 7(2):27, 2020
  • 3)和田 育子: Frontiers in Haemophilia 7(2):34, 2020

ライフステージ別血友病との付き合い方はこちら
中年~初老・高齢期

  • 注射することが難しくなっていないか確認する(静脈に注射できない、投与量の目盛りが見えないなど)
  • 自己注射が困難になった際の家族の役割やサポート体制について伝える
  • 運動不足を避けるための家族によるサポートや一緒に行える運動などについて話し合う
  • 加齢に伴う生活習慣病(高血圧症や心疾患など)のリスクについて話を聞く
  • 家族などのサポート体制について伝える
  • 自己注射が困難になった場合について相談する
  • 老後に向けた治療計画やサポート体制について相談する
  • 無理のない運動を紹介してもらう
2024年11月作成 BNF46O004A