ライフステージ別 血友病とのつきあい方学童・思春期
(小学校/中学校/高校)
監修
聖マリアンナ医科大学 小児科 長江 千愛 先生
幼児期の特徴を残しながらも身体が大きく成長していく小学生から、家庭外での行動が増える中学生・高校生は、学校行事や部活動などで、出血の可能性も増えます。
とくに思春期の頃は定期補充療法の開始や継続を視野に入れ、家庭でのコミュニケーションが大切になってきます。
血友病をしっかり学び、早く適切な治療を積極的に
小学校に上がって自立心が芽生え始めると、周りの子と違うことに疑問をもつようになります。年齢や理解度に合わせて、血友病とはどのような病気なのか、なぜ治療が必要なのか、薬がどのように効くのかなど、病気や治療についてわかりやすく説明しましょう。
痛みや違和感があるときは、なるべく早く血液凝固因子を補充することが重要です。そうすることで止血コントロールがうまくいき、痛みの程度が軽くなり、治療期間も短くなるからです。活動制限をおそれて痛みがあっても言わない、治療をしないという状況にならないよう、保護者の方の見守りも大切です。
また、この頃は自己注射の開始を考え始める時期です。本人の気持ちを最優先に考え、主治医や保護者の方が一緒になって十分に話し合いましょう。
■学童・思春期によくみられる出血
- 足利朋子ほか:“17 こどもへの病気の説明” はじめてでも安心 血友病の診療マニュアル
- 宮川義隆ほか編 初版 医薬ジャーナル社:238-239, 2017
- 小倉妙美ほか:“Ⅱ.診断 1.臨床症状” みんなに役立つ血友病の基礎と臨床
- 白幡聡ほか編 改訂3版 医薬ジャーナル社:112-118, 2016
適切な治療でスポーツ・活動の制限が減少
血液凝固因子の補充を適切に行いしっかり出血コントロールができていれば、ほぼ活動制限なく、健康な人と同じようにスポーツをすることができます。ただし、頭部や腹部を強く打撲するようなスポーツ・活動は避けましょう。
やりたいスポーツがある場合は、そのスポーツを行うリスクを十分理解したうえで、治療に積極的に取り組むことが重要です。
■リスクが高く避けた方がよいと考えられるスポーツ・活動
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● 武道の対戦形式や技をかけあう練習
( 2008年から中学校の体育で武道が必修となった) - ● 身体接触の強い格闘技やラグビー など
- 足利朋子ほか:“17 こどもへの病気の説明” はじめてでも安心 血友病の診療マニュアル
- 宮川義隆ほか編 初版 医薬ジャーナル社:240-241, 2017
学校生活では理解を得るために説明が必要なことも
血友病は定期補充療法や予備的補充療法によって出血予防ができますが、学校生活では思いがけず出血することがあります。学校に事前に症状や注意点などを説明し、周囲の理解を得るようにすることが円滑な学校生活につながります。
学校への説明では、病名だけがひとり歩きしてしまわないように配慮しましょう。
■学校に事前に伝えておきたいこと
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● 血友病の特徴について
- ・「血が止まらない」ではなく、「血が止まりにくい」病気である
- ・関節に出血をすると関節が腫れて痛がる
- ・打ち身であざができやすい
- ● 学校生活において制限されるスポーツや活動
- ● 緊急連絡先(保護者や主治医など)
- ● 出血が疑われる場合の症状
- ● 出血時の具体的な対応RICE(ライス) など
- 足利朋子ほか:“17 こどもへの病気の説明” はじめてでも安心 血友病の診療マニュアル
- 宮川義隆ほか編 初版 医薬ジャーナル社:242, 2017
- 小島賢一:“18 幼稚園、学校、職場と自分の家庭を目指して” はじめてでも安心 血友病の診療マニュアル
- 宮川義隆ほか編 初版 医薬ジャーナル社:246, 248, 2017